静寂が、音を立てて迫ってくるようだった。
弥山の頂き。一歩一歩、乾いた土を踏みしめて辿り着いたその場所は、地上の喧騒が嘘のように遠ざかっていた。聞こえるのは、風が岩肌を撫でる音と、自身の心臓の鼓動だけ。
ザックを下ろし、バーナーに火を灯す。チリチリという小さな燃焼音が、この広大な静けさの一部になる。
山の空気に馴染む、一杯の仕度
山頂で味わうコーヒーは、下界のそれとは少し違う表情を見せる。
冷たい風や、どこまでも澄み切った空気。そんな弥山の情景にすっと馴染む一杯を思い描きながら、出発の数日前、ファクトリーでじっくりと豆に火を入れてきた。
今回連れてきたのは、厳選したG1グレードの豆。
力強さを前面に押し出すのではなく、深呼吸したときに感じる山の清々しさのように、クリアでじんわりと甘みが広がるようなバランス。この景色の中でドリップしたときに初めて完成する味わいを想像しながら、静かに準備を整える時間もまた、登山の楽しみのひとつだ。

カップから立ち上る湯気が、白い空に溶けていく。 一口含むと、想像した通り、華やかな香りの奥に優しい甘みが広がった。
自然の懐に抱かれ、謙虚な気持ちでただ一歩ずつ高度を上げる登山の美学。 それは、生豆という自然の恵みに対峙し、理想の一杯へ向けて丁寧に味を整えていくプロセスと、どこか深く共鳴している気がする。
風の音をBGMに、丁寧に淹れた一杯を味わう時間。 『YAMA de Coffee』が提案したいのは、そんな静かな情熱の交差点だ。
次の週末、あなたはどの山へ、どんな豆を連れて行くだろうか。
YAMA de Coffee | 焙煎士・クリエイティブディレクター
Follow on Instagram